なんでわざわざ『マグラムロード』を手に取ったのか、という話である。どうもB級感の漂う完全新規タイトル。面白い保証はなかった。
その理由は……「なんかガッツリしたゲームに疲れてて、気楽なチャラい感じのゲームやりたかった」から。
で、その希望が満たされたかというと、これは間違いなく満たされたのである。このゲーム、色々問題はあるんだが、自分はなんだかんだ楽しんでエンディングまで到達できた*1し、何なら割と気に入っている。それを踏まえて、レビューいってみよう。
- ストーリー:魔剣と魔王と絶滅危惧種と、コンカツ?
- アクション:触り心地は悪くないが、アクションもカスタムも浅い!
- コンカツ: 魅力的なキャラクターと圧倒的低予算感
- まとめ:ポテンシャルは感じるので、アプデや次回作に期待
ストーリー:魔剣と魔王と絶滅危惧種と、コンカツ?
刃の魔王・キルリザークは、万物を両断できる「魔剣(マグラム)」を操る能力と傍若無人な性格ゆえに、【世界の敵】として神や他の魔王からも恐れられ、孤立していた。追い詰められて命からがら眠りについた魔王が次に目を覚ましたときに見たものは、神も魔王もどこかへ去って、人間たちが平和に暮らす世界だった。
この世界でもはや「絶滅危惧種」となってしまった魔王は、失われた力を取り戻すため、同じく絶滅危惧種となった「勇者」の姉弟や「獣人アイドル」、果ては謎の「機械人形」に怪しい「聖者」などをパートナーとして共に戦うことに。
だが、魔王に本当に足りなかったのは魔力でも人間の魂でもなく……からっぽの心を満たす「ときめき」だった!? かくして種族も性別も越えた「コンカツ」がここに始まる!
コミカルなノリに対して設定面はしっかり作りこまれており、実は話の根幹はかなりシリアスでもある。「異世界」よりも「ファンタジー」派の自分もこれにはニッコリ。本作最大の魅力は、間違いなくこのストーリーとキャラクターにある。
お気楽ファンタジーと見せかけて、まさかの方向に転がりだす物語。キャラゲーであることの制約を最大限に活かしきったキャラクタードリブンの展開は、ゲームシナリオとして完成されている。
「コンカツ」の対象であるパートナーキャラたちは前述の通り非常にバラエティ豊かなので、普通の人間を攻略するのには飽きちゃったのよね、という上級者も安心。
アクション:触り心地は悪くないが、アクションもカスタムも浅い!
魔王は色々あって、市民や政府から魔獣退治の「リクエスト」を依頼される立場となる。これを受託すると、アクションゲームパートへと移行する。魔王が魔剣に転身(マグラムフォーゼ)して、パートナーがそれを振るう、というわけである。
サイドビューのアクションバトルは、剣、斧、槍の三種の武器それぞれに設定されたコンボ攻撃とため攻撃、それとパートナーキャラ固有のスキルと必殺技を使って戦うというオーソドックスなもの。動きは割とキビキビしており、動かしててストレスはない。
だがアクションゲームとして見所があるかというと……。バランスは大味で、敵も味方もノックバックが長いので一方的にお手玉する展開になりがちである。逆に言うと、ちょっと装備やレベルが上がれば簡単にタコ殴りにできてしまう。回避アクションも一応あるのだが判定が弱く、敵の攻撃予備動作も小さいので避けきれないことが多い。結果として、大きく避けてため攻撃のワンパターンになってしまう。
細かいところだと戦闘中に敵がカメラの外から突進してきたり、空中の敵にやたら攻撃が当てづらいことも不満点。難易度が低いから許容できるけど、難易度高かったら遊んでいられないんじゃないかという気配はある。
そう、難易度はかなり低い。あっさり負けてしまうこともあるにはあるのだが、負けてもバトル直前からリトライ可能。アイテムを使ってのゴリ押しもしやすくなっている。
そしてもう一方の軸が、魔剣の鍛造と、様々な効果を持つデコレーションで武器をカスタムする要素である。だが、こちらも微妙に練りこみ不足を感じる。
敵に合わせて武器やデコを変えないと意味がないような効果設定になっているのに、カスタム画面の階層が深すぎて切り替えにくく、ソートも無い。効果にしても敵に依存しない、能動的に戦闘スタイルの定義ができるものがもっとあっていいと思う。
武器に装着できるデコの枠も少なすぎで、序盤は基本1つで、運がいいと2つ、終盤でやっと3つ付けられるようになる。例えば毒付与ビルドのような組み合わせを試せるのも終盤になってからだ。これはもっと大量に付けられるか、ワンボタンで切り替えられるようでないと意味が薄いシステムだと思う。
この辺、特にデコのソートはアプデで何とかならないもんかなと思うのだが、どうなんでしょうね。
このアクションとカスタム、どちらか片方だけでも遊びこめるものになっていればよかったんだが、どっちも今ひとつとなると残念ながらゲーム部分の出来は厳しいと言わざるを得ない。ただし脳死で殴っていればよく、適当にやっても取り返しのつかないことがないので、何というか非常に気楽に遊べるゲームではある。この気楽さは嫌いではない。
コンカツ: 魅力的なキャラクターと圧倒的低予算感
本作の目玉要素である「コンカツ」。パートナーキャラそれぞれと絆を深めていき、最終的には「魂の伴侶」を選ぶことができる恋愛シミュレーション風の要素だ。主人公と攻略キャラが異性だと恋愛エンド、同性だと友情エンドという慣例に沿わず、同性との「愛」エンドや異性との「絆」エンドを自由に選べるというので発売前に少し話題になっていた。といっても、そもそも主人公人間じゃないし、攻略対象も生物ですらないやつとかいるし、性別など些細な問題といえよう。
だが、蓋を開けてみると肝心のデートイベントと言えるものは各キャラ2個ずつくらいで、他は一言会話で終わるもののみとかなり物足りない。専用スチルも各キャラ1枚だけ(!)というのは、もうちょっと何とかならなかったのか。うかつに貼れないじゃん。予算がかなり限界ギリギリなのを感じる。
ただし、パートナーキャラの掘り下げが浅いのか?というとそんなことはない。メインストーリーやキャラ専用リクエストの方で、それぞれの成長と絆の物語がバッチリ描かれているからだ。この成長の物語が中盤のストーリーをぐいぐい引っ張っていくので、なかなかに熱い。これは任意のデートイベントでは出せない味だろう。
好感度はストーリー中の選択肢の他、戦闘を重ねたりアイテムを使うことでほぼ制限なく上げることができるので、全員同時攻略も容易で、特にペナルティ無しという緩めの仕様*2。
ちなみにデートと言いつつ甘さは控えめ。数が少ないせいでもあるのだろうが。本編との差別化の意味でも、デートは激甘でよかったのではと思わんでもないが、これはまぁ好みなので、爽やかで良いとも言える。
まとめ:ポテンシャルは感じるので、アプデや次回作に期待
このゲームで個人的に好きなのが、物語とゲーム進行、設定とゲームシステムが寄り添っている点だ。刃の魔王だから、魔剣を鍛造する。政府の管理下にあるから、依頼を受けて戦う。戦いのため、心の隙間を埋めるためにパートナーを必要とする……そこには確かに必然性があり、がっちりとスクラムを組むべく互いに手を伸ばしている気配は感じる。もう一息という感じはする。
コンセプトや枠組みは良い。アクションとカスタムがもう少し練りこまれていればチープでも良作になれるポテンシャルはあるのに、惜しいんだよな~。公式がアンケートを取っているようなので、今後のアップデートやブラッシュアップした続編で帰ってきてくれることを期待してます。できれば予算も増やして帰ってきてほしい。
手放しでおすすめはできないものの、物語やキャラに興味があって、アクションの手応えやカスタムの奥深さにこだわりがなければ楽しめるゲームだと思う。定価だとちょっと割高には感じるので、セール待ちでもいいかもしれないが。あと今どきオートセーブ無しという驚きの仕様なので、これから遊ぶ人は気を付けてください。
豪華でも斬新でもないし、完成度もぎこちない。でも、こういう作品が「魂の飢え」を満たしてくれるときだってあるのだ。
▼ゲーム情報
- プラットフォーム:PS4 / Switch ※各ストアページにリンク
- 価格: パッケージ版 7,040円 / ダウンロード版 6,400円
- 公式HP:https://www.d3p.co.jp/maglamlord/
- クリアまでにかかった時間:30時間程度
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