世はゲームサブスク戦国時代――!
――なのかどうかはともかく、2020年4月、日本からほぼ撤退状態だったXboxが、次世代ハードとともにサブスク遊び放題という新しい概念を引っ提げて帰ってきたのは割と衝撃的な出来事だった。しかもこのサービスはXboxハードを持っていなくても、PCやクラウドゲーミングだけでも利用できるのだという。
そんなXbox Game Passの加入者数は2022年1月時点で全世界2500万人*1だとかで、なかなか好調のようだ。かく言う自分も1年間で20本ほどのPCゲームをそこそこしっかりと遊び、サブスクという遊び方がすっかり気に入ってしまった。
こうなるとXboxの永遠のライバルであるプレイステーションも、指をくわえて見ている訳にはいかなくなったようだ。2022年6月から、既存のオンラインサービスPlayStation Plusをリニューアルする形で本格的なサブスクサービスを投入してきたのである。
このようにゲームのサブスクをめぐる状況は日々変化しており、上の記事に現況として書いた内容もずいぶん古くなっている。改めて現在(2022年10月)の各陣営のサービス内容を調べ直してみた。
※以下、プラン概要には主だった特典だけを記載しているので、実際は他にも色々付属している。詳細は各サービスの公式サイトを確認されたし
ハードメーカー系
Xbox Game Pass
- Xbox Game Pass for CONSOLE
- PC Game Pass
- 850円/月
- PCに対応
- EAタイトルの遊び放題(EA Play)付属
- Xbox Game Pass ULTIMATE
- 1,100円/月
- コンソールとPCに両対応
- クラウドゲーミング対応
ゲーパスが打ち出したのが、新作が発売日から遊べる「DAY1」だ。MicrosoftにEA、ベセスダがリリースする新作や、インディーを中心とした注目作の一部が発売初日から遊び放題となるというもので、ゲームのサブスクが決して「古いゲームが安価に遊べる」だけのサービスではなく、むしろ最前線を走るゲーマーのためのものなのだと印象付けたことが、ゲームのサブスクをめぐる潮流を大きく変えたように思う。
一方で、いかに超大作が集まるといえど海外のゲームが中心ではあるので、洋ゲーをあまり遊ばない人からするとあまりピンと来ない品揃えかもしれない。全てのゲームが翻訳されてはいないし、ローカライズの関係か、英語圏では追加されたタイトルでお預けを食らうこともたまにある。
それでも日本に向けて強くアピールしているのは感じる。2022年の東京ゲームショウに合わせて大々的なショーケースを開催して、日本のゲーマーに熱烈なラブコールを送っているし、
ここ数ヶ月で『ダンガンロンパ』や『ペルソナ』シリーズなど日本発の人気タイトルを積極的に取り込んでいっている。今後もこの路線が拡大するなら、今以上に日本で勢力を伸ばす可能性もあるだろう。
PlayStation Plus
- エッセンシャル
- 850円/月
- 2,150円/3ヶ月(約717円/月 相当)
- 5,143円/年(約429円/月 相当)
- 月ごとに数タイトルのフリープレイを供給
- 一度ライブラリに追加すれば加入中はずっと遊べる
- エクストラ
- 1,300円/月
- 3,600円/3ヶ月(1,200円/月 相当)
- 8,600円/年(約717円/月 相当)
- エッセンシャルに加えて
- PS4、PS5タイトルの遊び放題(ゲームカタログ)
- プレミアム
PS3タイトルが遊べるクラウドサービスとして始まったPlayStation Nowと、有料オンラインサービスのPlayStation Plusを統合する形でリニューアルされた新生PS Plus。ざっくり言うと、従来PS Plusと同じサービス内容の「エッセンシャル」、サブスクにあたる「ゲームカタログ」を追加した「エクストラ」、それにレトロゲームとクラウドストリーミングを追加した「プレミアム」の3プランとなった。
カタログのラインナップはなんだかんだで国内メーカーのタイトルが多く、Xboxと比べると親しみやすい顔ぶれになっている。JRPGのラインナップが豊富なのが嬉しい。
直近だと『ドラゴンクエスト』シリーズや『アサシンクリード』シリーズが一気に複数タイトル追加されたりと、積極的に更新されている。
特にプレミアムプランで利用できる、PS、PS2、PS3、PSPのタイトルが遊べる「クラシックスカタログ」は、PS3時代にあった膨大な数のPS&PSPソフトのダウンロード販売「ゲームアーカイブス」の後継サービスがやっと来たのか!?と、コアなプレステファンからの期待も高い。
そんな良いものを持ちながらも、PS Plusには難点もある。一つは競合のXboxに比べて値段が高いこと(月ごとの場合。年間プランだとほぼ同等になる)。プランをアップグレードする際は残りの期間を全て対象にするしかないなど、融通も利きにくい。*2
もう一つがUI周りの洗練されてなさだ。サブスクは要するに時間を買うものなので、迷わず快適に利用できるかはけっこう重要なファクターなのだ。PS StoreのUIの微妙さは誰もが認めるところだと思うが、実際に使ってみるとそれ以外にも少々困った仕様が。
PS Plusのクラウドストリーミング試して、速度足りなそうだったからDLしたらセーブデータが引き継がれない。嘘だろSIE。
— たわしフロンティア (@TowerSea255) 2022年10月3日
別で保存されててコピーできるらしいんだけど、どこからコピーするんだ…
見つけた。ストリーミング中にPSボタン押して「アプリケーションセーブデータ管理」→「ストリーミングゲームストレージのセーブデータ」を「オンラインストレージにコピー」だ。で、オンラインストレージから本体ストレージにコピーすると引き継げる。何言ってるかわかります? 私は分からんぞ…
— たわしフロンティア (@TowerSea255) 2022年10月3日
何故クラウドゲームのセーブデータとオンラインストレージが別口なのだろう……このあたりは是非とも改善を期待したいところ。色々文句を付けたが、システム面が整えば非常に満足度の高いサービスになり得ると思う。
Nintendo Switch Online
あくまでオンライン利用権であり、レトロゲーム遊び放題はそのおまけ……のはずがラインナップがじわじわと増加しており、2022年10月時点でのタイトル数は
- ファミリーコンピュータ 66タイトル
- スーパーファミコン 53タイトル
さらに追加パックでは
合計169タイトルを誇る、立派なレトロゲームサブスクの体を成してきている。何故メガドライブがそこにいるのですか。
さらにPS Plusがレトロゲームの遊び放題を最上位プランの目玉に据えたことで、その対抗勢力としても浮かび上がってきたのである。
また、これらは単なる移植ではなく、巻き戻し機能やどこでもセーブなども付いている。ゲームによってはオンラインで二人同時プレイができるのも面白い。
スイッチオンラインの良いところは何しろ安いことだ。年パスなら200円/月でほとんどジュース一本。オンラインプレイのために常時加入している人も多いだろうし、ゲームサブスク界のAmazon Primeと言っても差し支えないだろう。差し支えるか?
もう一つ触れておきたいのが「2本でお得 ニンテンドーカタログチケット」の存在だ。サービス加入者限定で、任天堂から発売される新作を含むフルプライスのダウンロードソフトが2本で9,980円になるというものである。サブスクではないが、継続的なサービス加入を条件にした大幅値引きということで似たようなマインドを感じる。
任天堂は買い切りという販売形態を大事にしてるようなので、サブスクに大きく舵を切ることはおそらくないだろうと思う。ただ、追加パックに近作のDLCを付けてみたりと、何らかの形を模索中のようには見える。
ハードメーカー系まとめ
最先端を走るゲーパス。過去資産のアーカイブを重視するPS Plus。パッケージを買って遊んでくれる人へのファンサービスという位置付けのスイッチオンライン。各サービスでラインナップやコンセプトにそれぞれ個性があるので、嗜好や目的に合ったサービスを選ぶとより楽しめそうだ。独断と偏見でおすすめするならば、こんなところだろうか。
- 最新のゲームを追いかけたい!洋ゲーも好き!→Xbox Game Pass
- 遊び損ねてた有名作品をじっくり遊びたい!→PlayStation Plus
- レトロゲームをお手頃に楽しみたい! →Nintendo Switch Online
もしくは、そのとき遊びたいゲームに合わせてサービスを変えてみるのも有力な選択肢かもしれない。どれもサブスクの停止がいつでも簡単にできる(退会ではなく継続購入停止の扱いになり、購入済みの残り期間も保持される)ことを確認したので、安心して試してみてほしい。
ソフトメーカー系
上記のようなハードメーカー主導のサブスクの他に、少数だがソフトメーカーが自社のゲームのみを独自に提供するサブスクというのがある。中にはハードメーカーのサブスクに付属するものもあるので要チェック。
EA Play
- EA Play
- EA Play Pro
- 1,644円/月
- 10,644円/年(887円/月 相当)
- EA Appのみ
- 通常プランに加えて
- ラインナップが増加(たぶん)
- 発売前ゲームのプレミアムエディションの先行プレイ
『ニード・フォー・スピード』や『スター・ウォーズ』ゲームシリーズ等で有名なEAの独自サブスク。Xbox Game PassのULTIMATEとPCプランには丸ごと含まれている。
新作ゲームの発売前のトライアルが付いているらしく、思想的にもゲーパスとの親和性の高さを感じる。これ単体の年間プランだとかなりお安いので、こちらに絞ってしまうのも一つの手か。
PSとかSteamに対応というのがどういうことかというと、それぞれのプラットフォームのストアにあるサブスク商品として加入が可能ということらしい。プラットフォームごとに別の契約となるようなのでそこは注意。
Ubisoft+
- Ubisoft+
- 1,500円/月
- Ubisoftのタイトルが遊び放題
- PCのみ
- Ubisoft+ Classics
- 単体加入不可
- PS Plusのエクストラ以上のプランに付属
- UBIsoft+の一部タイトルが遊び放題
『アサシンクリード』や『ウォッチドッグス』等で知られるUBIソフトのサブスク。自社作品のみとはいえ、老舗メーカーだけあってラインナップは100タイトル以上。
……まぁUBIのソフトってセールで大幅値引きされがちなのもあって、他と比べてしまうと少々割高感はある。が、発売日から新作が遊べたり、DLCなども付いてくるらしいのでこれでも十分お得だろう。
こちらはPS Plusと連携しているようで、一部のタイトルが「Ubisoft+ Classics」としてエクストラ、プレミアムプランで遊べるとのこと。PS4タイトルも混ざっているのにクラシックスだなんてご謙遜だ。
ゲームバラエティーUnlimited
これはちょっとかなりマイナーだと思うんだが、『ディスガイア』『夜廻』などでお馴染みの日本一ソフトウェアが提供するスマホ向けのサブスクサービスだそう。24タイトルが遊び放題になる。うーん……強気、というか実験的なサービスなんだろうか。
ユニークなのは自社タイトルの音楽聴き放題が付属すること。ゲームに限定せず、特定の領域の作品に関連するコンテンツをまとめてサブスク提供するというやり方には可能性を感じる。
ソフトメーカー系まとめ
プラットフォーマー提供のサービスと比べるとタイトル数は控えめにはなるが、プレミア感も出してきており、メーカーの熱烈なファンには嬉しいだろう。スクエニもやりませんか?
なんかこれ系の独自サービス、まだまだいっぱいありそうだ。見つけたら追記します。
スマートフォン系
ゲームのサブスク、といったときに忘れてはならないのが、スマホのプラットフォーマーが提供しているサービスだ。軽くまとめてみたが、自分はあまりスマホでゲームをしないので、どれも実際に加入したことはない。参考程度にどうぞ。
Google Stadia
スマホやブラウザで本格ゲームが楽しめる、Google肝入りのクラウドゲーミングサービス……だったのだが、つい先日(2022年9月30日)サービス終了が発表された。日本上陸すらまだしておらず、3年での終了。購入済みのゲームは全部返金するというから豪快である。
天下のGoogleでこれなのだから、ゲームビジネス参入の難しさを象徴する出来事だった。R.I.P.
Google Play Pass
- Google Play Pass
と思ったら、Androidスマホ向けのサブスクは元気にサービス継続している模様。ごめん生きてたわ。こちらはクラウドゲームではなく、Google Play Storeの中から厳選されたアプリゲームや実用アプリが広告・課金なしで利用できるというもの。
スマホなのでカジュアルゲームがメインかと思いきや、公式サイトには高難度ローグヴァニアこと『Dead Cells』がでかでかと表示されているのがちょっと意外。案外がっつり遊べるゲームを売りにしているのかも。買い切りのアプリをもりもり遊ぶ人には良いサービスなのかもしれない。
Apple Arcade
一方Appleは独自路線を貫き、有名クリエイターや大手メーカーのオリジナルタイトルを意欲的に投入している。
しているんだけど、ゲーマーへの浸透度は今一つ。どのくらい浸透してないかというと、Apple Arcadeでリリース済みのゲームが他機種に移植されると毎度「聞いたことないゲームだけど新作?」とざわつくくらいだ。スクエニやカプコン、コナミなどが完全新作をリリースしたりしているんだが。
金額で言うとApple系列の定期契約サービスがセットになったApple Oneがかなりお得に見えるので、単品で成立しているのではなく、こちらの一部としての存在意義がメインなのかもしれない。コンシューマやスマホゲー界隈からは見えにくい場所でうまくやっているのだろう。
スマートフォン系まとめ
「スマホでどこでも本格ゲーミング」には夢があるんだけど、Stadiaがコケたことで本格的に誰も手を出さない領域になってしまわないか少し心配である。XboxやPSもクラウドゲーミングには力を入れているようなので、そちらが早いだろうか。なんにせよ頑張ってほしい。
ちなみにGoogleとAppleの両サービスは家族で一本のサブスクを共有できるようで、家族が多い人なら人数で割れば月額も小銭程度になる。子供のいる家庭などで活用されているケースもあるようだ。
まとめ
調べてみて分かったのは思ったより色々種類があるぞということで、軽くまとめるつもりが結構な分量になってしまった。ここに書いたもの以外にもまだあるようだ。Netflixでもゲーム遊べるようになったらしいし……。
このブログにも何度か書いているけど、ゲームの好き嫌いには個人差が出やすく、約束された神ゲーなど本当はどこにも存在しない。だから評判に惑わされるよりも、実際に遊んでみるのが自分にとって良いゲームを見つける王道かと思う。数百本のゲームが遊び放題になるサブスクリプションは、それにうってつけのサービスだ。
どうかあなたが心のゲームに出会えますように。