『The Artful Escape』。本作は、小さな田舎町でフォークミュージシャンとなることを期待されながらも、そんな自分に違和感や迷いを感じる青年フランシスが……
……脳が透けてる宇宙生物と空からギター弾きながら降りてきたおっさんにキャトられて、宇宙船"COSMIC LUNG"に乗り込み、"HELIOTROMMS"だの"GLIMMERDIMM"だの、けったいな名前の星を巡る大銀河ツアーでギターをかき鳴らしまくるSF叙事詩だ!!
本当に本当にそういうゲームなんです。信じてください。
本作の宇宙は、古き良きスペースオペラ……スターウォーズとか(たぶんトレックもだ)で描かれたような夢いっぱいの宇宙である。過剰に飾り付けられたシップに、ヘンテコな宇宙生物が群れをなす星々。これはたまらない。グッと来たシーンのスクショを連ねればここには張り切れないほどある。
操作は超簡単なジャンプアクションと、特に難しくはないジャムセッションのみ。だが、物足りないということは全くない。
イマジネーション爆発の風景の中、ワンボタンで超カッコいいギターリフを奏でながら右方向に駆け抜ける、アクションパートの気持ち良さは極上だ。これには通りすがりの宇宙生物たちも大盛り上がり!
ジャムセッションパートも順番にボタンを押すだけなのだが、適度にファジーさを許容するのがいかにもそれらしく、適当なタイミングでボタンを押していっても何だかクールに決まってしまう。宇宙生物との伝説的なセッションには、宇宙一のレーザーパフォーマンスも付いてくる。最高か?
やり応えを求めるゲームではないんだけど、アートやサウンドを最大限に活かす気持ち良さにしっかり振られている。
ストーリーは一本道だが、一部の重要な選択肢やカスタマイズはしっかり後々のセリフや見た目にまで反映される作りになっている。
ストーリー上でプレイヤーに何かを選択させるという行為について、展開が変わるのではない方向で意味付けがあるのがユニークで、ちょっとこれは他では見たことがない。主人公の「なりたい自分」とプレイヤーの「演じたい自分」が渾然一体となって物語をドライブしていくという、ナラティブ的な観点からも見所のあるストーリーだ。
ぶっ飛びすぎててちょくちょく会話に付いていけないところもあるのだが、本作の場合はそれは逆に美点と言えよう。それを面白がれる人向けのゲームである。とはいえ、大まかな流れとしては素直な展開を見せるので、全く何が何やら分からないということはないし。
次から次へと星を旅するゴージャスさにしてプレイ時間は意外と長く、五時間半くらいだった。ロケーションも豊富で、ユーモラスな宇宙生物たちとのセッションをたっぷり満喫できる。
いやしかし、この演出力とイマジネーションを活かしてボリューミーに「遊べる」ゲームが作られたら、相当とんでもないことになるんではないか? Beethoven&Dinosaurの次回作にも期待大である。
▼アンリアルエンジン公式の開発者インタビュー記事
開発者はマジのロックミュージシャンとのこと。
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