『ファイナルファンタジーⅥ』『聖剣伝説3』『クロノトリガー』……スーファミ後期のRPGの緻密な絵画のごときドット絵は、今でも人々の心を捉えて離さない。
一時期は、ドット絵はロストテクノロジーだと言われていた。ゲームは3Dが主流となり、使える容量も増え、開発に必須ではなくなったドット絵が描ける人間はゲーム会社にすら残っていないんだと、まことしやかに囁かれた。
だが、昨今ではインディーゲームの隆盛により、非常に多くのドット絵ゲームを見かけるようになった。当時のマシンスペックに囚われない新しい表現も広がっており、ドット絵文化は今、新しい花を咲かせている。
『CrossCode』もそんなドット絵への愛にあふれたインディーゲームのひとつだが、それだけでは終わらない。
美しいスーファミ(SNES)風のビジュアルを作り上げながらも、今の時代にふさわしい爽快な手触りに印象的なストーリーを添えた、懐かしいだけでなく新しいアクションRPGだ。
- プラットフォーム:Steam / Switch / PS4 / Xbox One ※各ストアページにリンク
- 価格:1,980円(Steam)/ 2,200円(Switch, PS4)/ 2,350円*1(Xbox One)
- 日本語ローカライズあり
- 公式サイト:http://www.cross-code.com/en/home
- ストーリー紹介:MMORPGの世界と「喋れない主人公」
- バトルとアクション:稼ぎも楽しい爽快アクション
- フィールド探索:広大でバラエティ豊かなプレイグラウンド
- ダンジョン攻略:ボリュームたっぷり、苦労に見合う価値はある
- 最後に:物語は長く、しかも続きがある
ストーリー紹介:MMORPGの世界と「喋れない主人公」
このゲームの舞台は今よりずっと未来。現実の月に作られたプレイグラウンド上で動作する新世代のVR MMORPG『クロスワールド』の中だ。あるときこのゲームに、イレギュラーな新規プレイヤーが、裏口からこっそり紛れこまされる。
彼女の名前はレア。彼女が普通のプレイヤーと違っていたのは、記憶がないこと、そして自由に喋れないこと。
レアは記憶を取り戻すため、ゲームの外の協力者や、ゲームの中で出会った他のプレイヤーたちの助けを借りて、クロスワールドの世界を冒険しながら自身の、そしてこのゲームの謎へと迫っていく。
主人公レアの設定は往年のRPGの「喋らない主人公」へのオマージュであると同時に、喋れないことは物語における重要な要素としても機能している。
喋れないぶん、表情豊かで愛らしさもあり、プレイヤーを程々の距離感でゲームの世界に導いてくれる。このあたりにも懐かしさと新しさの融合を見ることができる。
主要な登場人物の多くは『クロスワールド』のいちプレイヤーであり、現実の暮らしを伺わせつつ、ゲームの世界を楽しむ様子が生き生きと描かれている。
こんな人たちとMMOが遊べたら実に楽しいだろうなと思わせてくれるし、物語が進めばレアの大事な仲間として、胸が熱くなるような場面だって見せてくれる(かもしれない)。
バトルとアクション:稼ぎも楽しい爽快アクション
本作のアクションは、スーファミ風の見た目に似合わぬスピード感のある、軽快で爽快なものだ。*2
具体的には、反射するボールを飛ばす遠隔攻撃と近接攻撃、各種スキルを使い分けて戦うというもの。トリガーと右スティックをフル活用した、全方位シューティングのような、忙しめの操作となっている。
そんな操作系も相まってバトル難度はやや高め。特にボス戦は手強く、苦戦することもしばしばである。
だが、このゲームはRPG。レベルを上げ、装備品をアップデートし、アイテムを活用することで突破口が見えてくるだろう。
基本の触り心地の良さゆえに、攻略のための稼ぎ作業もまた楽しい。雑魚敵を連続で倒すと戦闘ランクが上がっていき、報酬と経験値が多くもらえるシステムがあり、ランクが最大になると、画面や音楽が派手になって盛り上げてくれるのが非常に気持ちよい。
ボス戦は基本ひとりだが、普段は仲間(設定上PCだが、実際はNPCの仲間)とパーティを組んで一緒に戦うこともできる。時々雑談したり、プレイにコメントしてくれたりする。
フィールド探索:広大でバラエティ豊かなプレイグラウンド
『クロスワールド』には緑豊かな平野、雪原に砂漠、ちょっと和風なエリアといった多様な見た目のプレイグラウンドが存在している。定番路線かと思えばちょっと意外な雰囲気の場所もあったりして飽きさせない。
そんなプレイグラウンドの中を自由に駆け回れるのも、本作の魅力の一つだろう。フィールドには敵がいるだけでなくあちこちに宝箱が隠されているし、サブクエストを受注したり、それで見つかる隠しエリアといったものも存在する。
戦闘や草刈りで稼いだ素材は、街などにいるトレーダーに渡せば強力な武器や防具とトレードできる。物語上の設定だけではなく、システム面にもMMORPGらしさが食い込んでいるわけだ。
実際は完全シングルプレイのゲームでありながら、MMOの雰囲気を味わうこともできてしまう。
この探索周りで一つどうしても難儀なのが、フィールドの高低差について。見下ろしの2Dにもかかわらず、3段、4段の高低差がある足場を、同じ高さの足場にしか届かないジャンプで乗り継いで、時には画面切り替えをまたぐような複雑なルートを探さなくてはならない場所がある。
多くの場合は進行に必須ではないのだが……ここに関しては楽しさよりも煩雑さが勝ってしまっていると感じた。
ダンジョン攻略:ボリュームたっぷり、苦労に見合う価値はある
本作のメインコンテンツとしてダンジョンがある。部屋ごとにパズルを解いたり敵を倒したりしてフロアを進んでいき、最深部のボスを倒すとクリアだ。
パズルでは主に先述のボールを飛ばす遠距離攻撃を使う。様々な性質のボールを正しい位置から正しいタイミングで打ち、仕掛けを作動させて先に進んでいく。
ボールが仕掛けに与える動作は決まったルールに則っており、理不尽に感じるものはほとんど無い。
ただ……ちょっとボリュームは多い。ここは嬉しいのと面倒なのが半々だった。ちょっと思わずひるんでしまうような大規模なパズル部屋が多くあるからだ(やってみれば、そんなに難しくもないのだが……)。
ここで億劫だからとやめてしまうのは非常に勿体ないので、設定のパズル速度は遠慮せずに下げてストレスを減らすのを推奨する。解き方が分かってもタイミングがシビアでクリアできないことが割とよくあるので。
最後に:物語は長く、しかも続きがある
ここまでで薄々気付いてるかもしれないが、本作はインディーゲームによくあるコンパクトなゲームではない。実際は2,000円そこそこという値段から想像されるボリュームを遥かに超える大作である。*3
気軽に遊べるとは言い難いけど、じっくり遊ぶにはピッタリのゲームで、クリアする頃には登場人物たちにも愛着が湧いていることだろう。あの頃遊んだスーファミのRPGのように。
最後にひとつだけ。ちょっとネタバレになるが、このゲームはエンディングの後、明らかに続く感じを残して終わる。
続きは有料DLCでの配信が予定されており、つい先日予告編PVと詳細が発表された。Steam版が2/26配信、コンソール版は今夏配信予定で、これが正真正銘の最終章になるとのこと。未完結に怯える必要はなくなったので、安心して遊べるようになった。
(8/22追記)完結編DLC『A New Home』が、8/12よりついにコンソール日本語版にも配信開始されました。長かった……!
ということで、2DアクションRPGが好きな人、MMOを扱ったストーリーが気になる人、スーファミに人生を狂わされた人、ドット絵好きのあなたに。
『CrossCode』、おすすめです。
▼(11/3追記)DLCもクリアしてレビュー書きました。本編気に入ったらこちらも是非。