タイムリープ/時間旅行という概念を用いた物語、その中でもとりわけループものと呼ばれるジャンルがある。主人公が何かのきっかけによって時間を遡る能力を得て、望まぬ未来を変えるために同じ時間を繰り返すことで奮闘する、といった類のものだ。
そんなループものの一つとして2022年にアニメ化された『サマータイムレンダ』。放送終了からいくらか経ってしまっているんだけど、先日完走して非常に面白かったので手短に紹介させてほしい。まずはあらすじから。
故郷の離島を離れて東京で暮らす網代慎平は、幼馴染である小舟 潮の訃報を聞いて島に帰ってくる。そこで直面したのは、島に伝わるドッペルゲンガーじみた「影」の伝承と、それによって潮が殺されたのではないかという疑惑だった。真相を確かめるべく行動を起こした慎平は「影」に殺され、気が付くと島に帰った初日のフェリーの上に「戻って」きていた――。
そんな感じで、伝奇サスペンス×ループものといった雰囲気の導入をもつ本作。少しネタバレになるかもしれないが、話が進むにつれてその色合いは少しずつ変わっていき、特に物語の折り返しあたりで大きくギアチェンジする。アニメ版だとこれが主題歌の切り替えタイミングと重なってバチバチに決まっていて、その演出に完全にやられてしまった。
だって一クールめOPのこの静かな不気味さから
二クールめでこれになるんですよ。静と動。鮮やかがすぎる。
ビジュアル面では、ヒロインの潮がほぼずっとスク水姿、というキッチュさが目を惹く。単に酔狂なのではなくて、しっかり設定に裏打ちされているのもポイント高い。可愛い妹的存在がいて謎めいたクールなお姉さんがいて、と周囲を固めるヒロイン陣も魅力的。ただ、この少年漫画らしいチャーミングな絵面は、2022年においては微妙に視聴者を限定してしまっているような気がしなくもなかった。原作の連載開始が2017年。この五年でアニメもゲームも、メジャーな作品ではお色気はすっかり息を潜めるようになった。基本的には良いことだと思うんだけど、もしかするとシリアス寄りの作品でこういった絵面が見られるのは本作あたりが最後になるのかもしれないと、そんな気もするね……。
そして本作、それはそれとしてループものとしてはかなりの本格派なのである。後述するがループもの・過去改変ものというのは派手な面白さを持つ一方で、物語構造的に大きなウィークポイントを抱えている。また時系列や因果関係の複雑さを扱いきれずに途中から大味になる作品も多い(破綻しないように、割り切って大味にまとめるのがセオリーであるとさえ言える)。そんな中で、これだけの規模のプロットを最後まで大きな矛盾なくやり切っているのは、凄いですよ。
ゲームブログとしては、その話の組み立てが妙にゲームっぽいところも気になるところ。ループを理解するや否やタイムスケジュールとフローチャートをまとめ出す主人公の思考はある意味「ゲーム脳」的でもある。また物語的にもゲームは重要なモチーフになっており、終盤の重要なシーンでとあるゲームが実名で登場するのもちょっと面白いので楽しみにしててください。
緻密に作りこまれた本格ループものとしての面白さと、少年漫画らしい華やかなキャラクターが織りなす勢いのある展開。この二つが綺麗に融合しているのが本作の魅力と言えるだろう。
あとはそうだな。個人的な好みなんだけど、例えば「何かが憑りついている」とか「中身が入れ替わっている」ような場面で「声は元のキャラなのに、喋りの調子だけで"中身"が別のキャラだと分からせる」演技を見るのが好きで。なんかこう声優演技の技巧の塊って感じがするじゃないですか。本作、「影」の設定の妙でそういった名演がたっぷり見られるのが嬉しかった。
放送中にはディズニープラスの独占配信だったが、今は各種配信サイトでの配信も始まってるので、よかったら。おすすめです。
以下、最終話までのネタバレ感想。
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